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Kwansei Gakuin University Athletics Department
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COLUMN

2021.10.21

米国学生スポーツ通信-No.1

はじめまして、この度KGAD様の連載企画として「米国学生スポーツ通信」を担当させて頂くことになりました前川友穂です。

現在私は米国ニューヨークにあるコロンビア大学のスポーツ経営学修士課程に在籍し、スポーツビジネスを学んでいます。スポーツビジネス全般もさることながら、

最大の関心事である「学生スポーツ」について勉強していることもあり、在学期間を通じて米国の学生スポーツにまつわる情報を現地から発信していきたいと思います。

ご存知ない方も多いかと思いますが、今日本の学生スポーツは大きな転換期にあり、関西学院大学はその流れを形作る大学の一つです。

いち早く学内に体育スポーツ局(KGAD)を設立し、スポーツを通じた人材教育のあり方を整備する等、他大学と比較しても、類を見ないほどのスピードで改革を推進しています。

まだまだ成すべきことが山積していますが、関西学院大学が日本の学生スポーツを変えるという壮大な課題にチャレンジをしていく中で、微力ではありますが、その一端を担わせて頂き大変光栄に感じています。

日本の学生スポーツが少しでも良い環境になってほしい…そんな想いで日々勉強していますが、私の連載を通じて、多少なりとも学生スポーツへの関心が増え、「日本での学生スポーツはどうあるべきか?」を多くの方が考えて頂けるような、そんな内容にしていきたいと思います。

何分、このような書き物は初めてということもあり、不慣れな部分もありますが、広いお心で見てやって頂けると幸いです。

本号では私の自己紹介及び留学に至るまでの経緯をお話させて頂きます。

私は2012年に関西学院大学商学部を卒業し、部活は体育会ラクロス部に所属していました。大学時代の思い出は?と聞かれると、ラクロス部のことしか思い出せないほど24時間365日をラクロスに捧げた大学生活を過ごしており、良くも悪くも濃い4年間を経験させて頂きました。

高校ではラグビー部に所属していたのですが、大学では何か新しいものに挑戦したい、大学から始めるラクロスは頑張り次第では日本代表を目指せる、といった経緯からラクロスに魅力を感じ、ラクロス部に入部しましたが、

クロスと呼ばれる棒の先端に網が付いている道具を使いゴールの得点を競い、(男子の場合)クロスで相手を叩いてボールを奪ったり、体をぶつけることができたり等、スポーツの要素がすべて含まれているといっても過言ではないほど様々なことができるスポーツで、日を増すごとにその魅力に引き込まれていました。

ちなみに、ラクロスという競技は今でこそ日本ではご存知の方も多くなりましたが、さかのぼれば1986年に慶應義塾大学の学生が米国より持ち込み始まった比較的新しい競技で、実は関西でのラクロス部第一号はこの関西学院大学なのです!(1988年創部)

<2010年関関戦>

一方で、ラクロスの競技以外に非常に興味を引くものがありました。

部活動の環境です。

入部時、私はまずラクロス部の環境に衝撃を受けました。(今も変わりませんが)ラクロス部の練習場は学内にはなく、公営のグランドを借用していたのです。

学校の部活が学内のグランドを使用していないとは思いもせず、更には学校・グランド間の移動は、大きな荷物を抱えながら原付や公共交通機関ともあり、非常にカルチャーショックを受けたことを今でも覚えています。

また、そのグランド使用料を含む活動資金は部員の部費から賄われており、授業の合間を縫ってバイトをしてお金を稼ぐ等、お世辞にも恵まれた環境と言えるものではありませんでした。

アメリカンフットボール部、サッカー部、野球部…と、非常に整った環境の中で活動できる部と比較して「なぜラクロス部はこうも環境が違うのか?」という想いがずっと心の中に残り続けていました。

<現在も使用する西猪名公園球技場@伊丹市>

更に、その想いを強くする体験がありました。

アメリカの学生スポーツとの出会いです。

ラクロスは、発祥こそはカナダですが、アメリカが世界一の人気を誇り、私はよくアメリカの大学生のプレーを参考にしていました。

学生といっても、日本のレベルとは比べ物にもならないほど高く、日本代表がいちアメリカの大学と戦っても箸にも棒にもかからないといったもので、それほどアメリカの大学は進んでいたのですが、

プレー以上に目を引いたのが環境でした。

選手は常に最新の防具・用具・ユニフォームに身を包み、試合はアメフトの巨大スタジアムを使用、試合は大手スポーツチャンネルが全国放送等、

学生スポーツではなく、それはプロそのものでした。

「なぜ同じ大学生が同じスポーツをしているのに、こうも環境が違うのか?」

と、圧倒されたと同時に、率直に疑問と興味を持ちました。

気になると、とことん調べる性格ともあり、アメリカの学生スポーツについて調べてみると、アメリカには、NCAA(全米大学スポーツ協会)という組織があり、「スポーツを学校が主体的に行う意思を持った」大学が加盟し、

NCAAの理念である「ACADEMICS(学業)「FARENESS(公平性)」「WELL-BEING(安全・健康)」に基づき、理念の実現・維持に向け学生スポーツが運営されていることが分かりました。

自身が影響を受けたアメリカの大学スポーツの環境が充実している面は、あくまで一部分であり、

競技、学業、健康、安全、キャリア、資金等、学生がスポーツをする上で必要となる要素を学校が教育と位置づけ、ヒト・カネを掛けて、主体的に取り組み、

「Student First」が前提で物事が議論されており、その精神と視座の高さにとても感銘を受けたことを今でも覚えています。

<2018年NCAAトーナメント決勝 デューク大学vsイェール大学>

<シラキュース大学保有のドームスタジアム>

その後、部活動の環境整備に向け、仲間と共に動ける範囲で改革に動きました。

部の運営体制を変えるところまでは実現でき、今まで以上に円滑な組織運営ができるような体制整備までこぎつけましたが、

学生且つ選手が動ける範囲は限定的であり、そもそも何もノウハウのない中で、学生が猪突猛進に突き進んだだけのものであったので、懸案のグランドや資金問題も解決できず、

結局部活動の環境整備に向けた想いを心の奥にしまったまま、就職することになりました。

〈出張先のチリでの一コマ〉

卒業後は、東京の総合商社に勤務することとなり、しばらくは学生スポーツとは無縁の生活を送っていました。

そんな中、とあるニュースを目にすることになります。

「日本版NCAA設立」

これは2016年からスポーツ庁主導の下、日本版NCAAを設立する動きがあったもので、

(少し内容は固くなりますが)2016年6月に政府が打ち出した日本再興戦略において、2015年に5.5兆円だった国内スポーツ市場の規模を25年までに3倍超の15兆円に拡大するという目標を掲げ、

これまでまったく手が付けられてこなかった学生スポーツのビジネス化に着目したというものです。

「いよいよ日本も学生スポーツに動き出したか!」

と、学生時代に抱いた想いが実現するかもしれないという期待感に、人知れず胸を膨らませていました。

しかしながら、詳細は割愛しますが、残念ながらこの動きは本来想定していた方向には進まず、その後2019年にUNIVAS(大学スポーツ協会)という組織が設立されるのですが(※関西学院大学は未加盟)、

未だしっかりと機能しておらず、日本の学生スポーツ改革の実現はまだまだ険しい道のりとなっています。

丁度その頃の私は、自身のキャリアに悩んでいました。

入りたい会社に入り、やりたい仕事もでき、何不自由ない生活を送っていた中で、「自分が働く上での幸せとは?」という問いにぶつかっており、

色々邪念やバイアスを取り払い考えてみると、どうしても「スポーツ」「学生スポーツ」が自分の中では切っても切れない存在であることが分かり、

(少し大袈裟ですが)いつ死ぬか分からないこの一度きりの人生を最大限に楽しむためには、周囲や世間からの期待ではなく、「自分が何をしたいか?」に正直になることが必要だと考えを改め、

その日から、スポーツ・学生スポーツに携われるキャリアプランを考え始め、丁度どこか落ち着いたタイミングで勉強したいと考えていたこともあり、米国のスポーツ経営学のプログラムへの進学を決めました。

少々長くなりましたが、以上が私の自己紹介・留学に至るまでの経緯となります。

今後、定期的に学生スポーツ関連情報を連載させて頂きますが、もし気になる内容等ありましたら、私かKGADご担当者宛に是非ご連絡頂けると幸いです。

それでは、今後とも宜しくお願いします!

<プロフィール>

前川 友穂

関西学院大学商学部卒業後(在学中、体育会ラクロス部主将)、三菱商事株式会社に入社。船舶・自動車分野で、事業開発・トレーディング・ファイナンス・事業投資・戦略企画を幅広く担当。同社退職後、ファナティクス・ジャパン合同会社でのインターンを経て、米国コロンビア大学スポーツ経営学修士課程に進学。

Email:                 tm3187@columbia.edu

Linkedin:            https://www.linkedin.com/in/tomoho-maekawa-a65108112/

Twitter:               https://twitter.com/tomihonmimanofu